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La Vie d'un Guide

山の男! 江本悠滋のBLOG

針ノ木 スキー (写真を1枚UP)

かなりこの針ノ木での雪崩の事が気になってる人が多いのでご期待に答えて…
当日(4月15日日曜日)僕達が扇沢の駐車場に着いたのは7時位ですでに多くの車が止まっていました。そして、準備をしているパーティーも既に出発しているパーティーも多く居ました。
僕達はこの7時に駐車場に居たパーティーの中では多分1番始めに上り始めました。時間は7時30分位。
お天気も良いし、時々吹く強風が少し肌寒い位で最高の山スキー日和と言った雰囲気でした。
小屋までの平らな場所でもこの時間らしく日が当たった面は少し緩み、日陰は未だ凍った感じでした。この時既に太陽が一番当たる南面からは少し雪が崩れる(子供が手で握れる程度の)と言った風景は在りました。下からマヤクボ沢の出会いより下が見える頃には僕達の前に約1時間~2時間程前に出発したであろう先頭グループ(その時数えて約25人位)確認出来ました。
それからしばらくすると斜面に雪のむらが有るのも感じました(風が有った様子)それから稜線が見えるように成った時には風が一方から常に吹いている事と先日入ったグループが流された破断面(幅15m位)がしっかりと確認出来ました。そしてもうひとつは針ノ木峠側から山頂に向かって大きくトラバースして行く1パーティー。
このパーティーの事はかなり気に成っていました。
※土曜日の破断面とほぼ同じ斜面(向き)+風の影響からすると一番雪崩そうな斜面をトラバースしているのですから。

自分達が出会いに着くと僕達とほぼ同じ位置に単独のスノーボーダー(つぼ足)カールのほぼ出口(スバリ岳側)に15名程居るのを確認し、先行パーティーと同じトレースは使わず、余りジグを切らないようになるべく直登気味に登りました。ちょうど自分が前のパーティーと同じ位置(カール出口左岸の尾根)に乗って周り観察しているとカールの頭から雪崩が吹き出すのを目撃。(自分の居た位置からは山頂は見えませんでした)自分の後ろにいるゲストの位置と雪崩のルートを確認しながら「雪崩!走れ!」のコールしゲストの姿と雪崩をを最後まで確認。
同時にカールの出口から雪崩と共に1人吐き出され転がり落ちるのを確認。雪崩が止まり見えた本人が「もう一人いるんです!」の言葉で自分は直ぐに救助体制へ。
同じレベルに居た別のパーティーには速やかに尾根へあがるよう指示し、この場所で2つ目の雪崩が発生しないかを観察してもしもの時にはその事を知らせるよう指示し自分はビーコンを受信モードに切り替え雪崩の上へ。
転がって来た人の所で雪崩れた場所の確認ともう1人がビーコンを付けているかの確認。そのまま雪崩れの上をジグザグに滑走しながらビーコンの音を探し降りると、下では人が走り回って居るのを確認、途中ストックなども見えたけどビーコンの発信音だけを探す事にしていたのでそれらは無視。末端まで行くと2人目の人が横たわって居るのを確認(数名周りに居ましたがいつの間にか誰も居ませんでしたが…)僕達の直ぐ後ろに居たスノーボーダーもそこに居ることを確認。
横たわっている人が動けない事(怪我をしている事)も確認できたので
周りで受信モードで探そうとしている人に発信モードに切り替えるよう指示し自分のゲストに無線を使って2人目の発見の報告をして怪我人の手当てに、痛いと言う足を動かさないようにパンツのチャックを開け足の様子を見るとブーツの上から出血を確認、その他は大きな怪我は確認できず、この時点で自力での下山&搬送もこの天気であればへりでの搬送がベストと判断。その時、同じガイド組合の木村ガイドも現場に到着、木村さんに連絡面を全てやってもらう事に。
怪我をした人は体制が悪いので一段下にスコップで平らな場所を作り雪に直接触れないようにザックをひいてそこに3人で移動。(横に体1つ分程度の移動/木村さんに彼の両脇を自分のゲストに怪我をしていない足を、自分が怪我をしている側の足を持って)その後ツエルトをかぶせる。
遭対無線も携帯も電波は繋がらず、1パーティーに降りてもらって携帯で連絡してもらう事に。
とまあ慌しかったですが、無事に怪我をした彼らも救出され良かったです!

まあこれが現場での様子なのですが、やはり今回この事故の中で自分が見た物の中には目を疑う物が有りました、雪崩れを起こしてしまった本人達の行動(膝までのつぼでの長いトラバース&2名くっついての登り)は雪崩れを発生させてしまってもおかしくないとは思いますが、その後、直ぐ横の斜面左右を下では多くの人が居るのを見えているにもかかわらず(下から滑って来たのを見ているので上からも見る気が有れば見れたはず)滑ってくる人、カールの上から急斜面を大きくトラバースする人、無線で『上の仲間がスキー回収しましょうか?』と優しい声をかけながら上から下へ向かってスキーを流すパーティー…
言いたい事だけ言って登って行く人、中には破断面を見に登って足元から「ボン」と弱層がつぶれた音を破断面横で聞いてびびったとブログに書いている人など…
もちろんビーコンも付けないで山に入る滑り手…

ここはいったい何処なんだと真剣に思いました!
きっと僕が思っている以上に山に入る人の多くが本人にもそして他人にも危険な物で有ると。

その他にもこのブログでは書けないような《大》きな疑問もありますが…ですね。

今回はなにより、埋まっていなかったのとあの規模(標高差500m、距離にして1km以上)の雪崩で2人共無事だった事ですね。

元気に成った彼らに又山の中で会えると良いな~

100_0778.jpg
↑これが大体の雪崩の全景です。
  1. 2007/04/17(火) 14:31:36|
  2. ガイディング
  3. | トラックバック:1
  4. | コメント:5
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コメント

 雪崩で怪我人が出たのですね。
 怪我ですんで、不幸中の幸い、ですね。
 雪崩にはあいたくないですが、あったら、自分が何が出来るかって考えてしまいますね。でも、2次災害も起こしたくない・・・。
 山スキーに行かないってわけには行かないし・・・。

 救助活動ご苦労様でした。
 来シーズン、また楽しい山スキーが出来ることを楽しみにしています。
  1. URL |
  2. 2007/04/17(火) 19:06:33 |
  3. おかだ #-
  4. [ 編集]

おはよう御座います!

先日はお疲れ様でした。
江本さんの”雪崩だ!”の叫び声で振り返るとゴーーーーーという音と共に、今まで見た事も無い大きな雪崩が背中から迫ってきました。(雪崩に巻き込まれている人も含め。。。)今までだらだら登っていたのに、メチャメチャ速いスピードで20m走り、巻き込まれずには済みましたが、本当に事故は ”紙一重” と痛感しました!!

自分のいる斜面は大丈夫なのかと心配しながら救助の準備をしていたら。
江本さんが数秒でシールをはがし、雪崩の上を捜索しているのを見て”早っえーーー”
その後、雪崩発生から5分も経たないうちに江本さんからトランシーバーにもう一人の生存の連絡が入り、それを上部で雪崩から吐き出され、ずーともう一人の名前を叫んでいるパートナーに伝えると ”生きてて良かったー・・・” とやっと少し興奮状態がおさまり。。。
怪我をされた方、お大事に!!

江本さん、明日からまたよろしくです。
  1. URL |
  2. 2007/04/18(水) 09:32:02 |
  3. moto #-
  4. [ 編集]

こんにちはコロンビアの緑のジャケットを着ていた友崎と云う者です(年に数回はTAKIさんツアーに参加している関係で、こちらのブログもチョクチョク覗かせて頂いていました)。当日、江本さんがつぶやいたひと事が気になって、日曜からずっと考えているのですが結論が出なそうなので質問させてください。その一言とは「ツボ足で登る人が多いなぁ?」で、様は当日の状況下では、ツボ足でなければ登れない様なら、その斜面を登らずに下山すべきだったのか?どうかと云う事です。もちろんツボ足による登高が雪積層に大きな圧力をかけてしまう事(雪面にクサビを打つ様な行為)は理解していますが、こと転倒・滑落を防ぐには有効な手段だと思いますし、純粋な登山の方は当然ツボ足で登る訳だし。江本さんがおっしゃりたかった事はツボ足が悪いと云う事ではなく、「間違ったツボ足登高をしている人が多いなぁ?」と解釈すればよいのでしょうか?僕としてはシールでの急登が苦手なのでツボ足登高に切り替える事が多い為、より安全なツボ足登高技術を身に付けたいと思っています。現時点での僕の理解は「雪崩の危険性が高い斜面をツボ足で登る場合は一人ずつ距離をあけ(雪にかかる圧力を少なくする)出来る限り直登ぎみに登る(破断差させずらい)」と云った所です。

当日、僕は救助する側でしたが、タイミングが違えば彼らの直ぐ後、もしくは最初にあの斜面に入ってカールの平場からトラバース気味にツボ足で稜線に上がっていた可能性が高いので、とても複雑な気持ちです。

それから「ブログには書けない大きな疑問」気になります。

お忙しいとは思いますが江本さんなりの考えで結構なのでお答え頂ければ幸いです。ブログ内での返信が無理な場合、直接メール下さい。無理なお願いをしてすいませんが、お返事待っています。
  1. URL |
  2. 2007/04/19(木) 16:32:29 |
  3. ともさき #-
  4. [ 編集]

つぼあし

ともさきさん
こんにちは先日は怪我をした彼らの為に色々してくれてありがとうございました。
《つぼ足》に関してですが、
1)シールを登るスキーヤーが少ない=シールは持たず、スノーシュー(スノーシューは急な斜面&トラバースが登りにくいので使えない事も多い)を使う人が多い
2)シールを付けて登るのと同じようなラインでつぼ足で歩く人が多い。
  これはスキーヤーが少しでもシールで歩いた上をボーダーがスノーシュウで上がる事が多いのでスキーヤーも同じように登のかな~
3)スノーボーダーも春山だからと言う事かスノーシューを使わないでつぼで駐車場から出発していた人も多いし。
なのでここでは特別今回の雪崩と直接的にリンクして言ったのではなく、今回山で見た事をふと言ったのでしょうね。
でも今回の雪崩が起こった1つの原因とも取れるかもしれませんが。あくまでも複数ある原因の1つと言う事ですよ。
《雪崩》に対する登り方と《登り安さ》の登り方は全く違います。
お分かりと思いますが当然稜線から登れば雪崩の可能性は極端に減ります。でも登り安いのは雪が付いた斜面。雪が付いた斜面は当然雪崩の可能性はあります。
なので常に、《登り安さ/効率の良い登り》と《自然災害/雪崩や落石など》に対する2つのファクターから登るラインを組み立てるのがより正確なルート選びのタクティクスです。

《大》きなの方はゆっくり文章をまとめないと正確に伝わらないと思うのでゆっくり時間をかけて書ける時にBLOGもしくいは紙面に書きたいと思います。

少しは正確に質問に答えられたと良いけど。

  1. URL |
  2. 2007/04/22(日) 00:09:10 |
  3. EMOTO #-
  4. [ 編集]

こんにちはともさきです。お返事ありがとうございました。大体僕の理解は間違っていない様なので、少しホッとしました。ただやっぱり当日の事を思い返すと山の難しさを痛感させられます。入山前の計画では雪崩のリスクが高そうなので急な斜面は避け、峠の方から稜線に出て針ノ木のピークを目指そうと思っていましたが、時より雪煙の上がる強風を確認して、稜線ルートは却下し沢ルートに、そして事故発生。前日の悪天候で雪の状態が良くない事は解っていたので登りながら雪の状態にも気をつかっていたし、他のパーティーがトリガーになる雪崩にも注意を払っていましたが、事故が起きなければそのままカールへ出て稜線へ向かっていたと思います。やっぱりリスクの高い時は登りでも要所要所でピットを掘り、効率が悪くても安全なルート取りをしなければいけないと云う事ですね。時間や体力を考えると難しいですが。

でも僕は雪崩などの自然の力より、身勝手な人間の方がよっぽど恐ろしい物だと感じました。
雪山を楽しんでいる人は自分と近い価値観で、常識・良識のある方だと思っていたので、、、

これからもブログ覗かせて頂きます。ありがとうございました。それにしても涸沢にTAKIさん達は立山と羨ましいですねー!僕は昨日から急に熱を出した子供達の看病で山はお預けです。
  1. URL |
  2. 2007/04/22(日) 12:59:51 |
  3. ともさき #-
  4. [ 編集]

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針ノ木岳の雪崩事故について

針ノ木岳のマヤクボ沢で雪崩事故がありました。
  1. 2007/04/18(水) 10:25:42 |
  2. トツゲキ日記

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江本悠滋

Author:江本悠滋
☆フランス国家山岳ガイド
☆フランス国家スキー指導員
☆UIAGM国際山岳ガイド

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